周囲の同じ月齢の子どもがすでに前歯を見せて笑っている姿を目にすると、「生後6ヶ月を過ぎても歯が生えない原因は何なのか」「もしかして生まれつき歯がないのではないか」と思い詰めてしまう親は少なくありません。しかし、歯の萌出タイミングは身長や体重の増加スピードと同じく、極めて個体差が大きい領域です。
生後6ヶ月時点で歯が生えていないのは、医学的には全く遅れていません。小児科や小児歯科の基準では、生後8〜10ヶ月頃まで1本も生えてこない乳児は無数に存在します。また、早産や低出生体重児として誕生した赤ちゃんの場合は、暦月齢ではなく「修正月齢(出産予定日からの計算)」で成長を評価する必要があり、歯の萌出もその分だけゆっくり進むのが自然です。
さらに、1歳になっても歯が生えない理由として最も多いのは、病気ではなく単なる「萌出遅延(体質的な遅咲き)」です。栄養状態やカルシウム不足を心配する声も聞かれますが、母乳や育児用ミルク、離乳食を月齢相応に摂取できていれば、栄養欠乏が原因で歯が生えないケースは現代日本において極めて稀です。
ただし、ごく稀に「先天性欠如(生まれつき歯胚が存在しない状態)」や、歯ぐきが異常に分厚く歯の頭が突き出せない「萌出遅延症」が存在します。客観的な受診ラインとして、「1歳3ヶ月〜1歳6ヶ月を迎えても最初の1本が全く萌出する気配がない場合」には、一度小児歯科を受診して歯科用レントゲンによる骨内部の確認を行うことが推奨されます。