教育・保育の現場を取材すると、デジタルデバイスの早期浸透と引き換えに失われつつある「リアルな身体感覚の欠如」に危機感を抱く声が後を絶ちません。都内の認可保育園で20年以上のキャリアを持つベテラン保育士は、次のように現場の実態を語ります。
「以前であれば3歳児クラスで自然にできていた『シールを台紙から爪先で剥がす』『洗濯バサミをつまんで開く』という動作ができないお子さんが目に見えて増えました。タブレットのスワイプやタップは、指の腹を軽く滑らせるだけの平面的な動作です。そこには抵抗感も重力も存在しません。結果として、指先でモノをつまみ上げる対向運動(親指と他の指を向かい合わせる力)が育たないまま成長してしまうのです」
SNSやネット上の相談コミュニティでも、「小学校に入学したものの筆圧が極端に薄く、ノートの文字が読めない」「靴紐を結べず、面ファスナーの靴しか履けない」といった保護者の切実な悩みが数多く投稿されています。物理的な感触を伴う遊びの絶対量が減少した結果、指先への固有受容感覚(筋肉や関節が感じる力加減のセンサー)が未熟なまま放置されている現実が浮き彫りになっています。