1970年代から1980年代の日本のポップスシーンを牽引し、「さよなら」「言葉にできない」「Yes-No」など不朽の名曲を世に送り出したグループ「オフコース」。彼らの正式なバンド名の英語表記は、言うまでもなく「OFF COURSE」です。
1969年、横浜の聖光学院高校の同窓生であった小田和正氏、鈴木康博氏、地主道夫氏らによって結成された当初、グループ名は「ジ・オフ・コース(The Off-Course)」と名付けられました。当時の音楽界の証言や回顧録によると、この命名には「既成の音楽界のレールや流行にとらわれず、自分たちだけの道を外れて突き進む」という鮮烈なアティテュード(姿勢)が込められていました。
エリート街道を歩んでいた若き建築学科生(小田氏)や工学部生(鈴木氏)たちが、安定した社会規範から自ら「コースアウト」し、未知なる音楽の世界へ漕ぎ出していく決意の表明でもあったのです。
やがて表記は冠詞のない洗練された「OFF COURSE」へと昇華し、1980年代には全米進出を見据えた全編英語詞のアルバム『Back Streets of Tokyo』(1985年)をリリース。ビル・チャンプリン(シカゴ)やピーター・ベケット(プレイヤー)といったトップミュージシャンを作詞陣に迎え、小田和正氏の圧倒的なハイトーンボイスと緻密なコーラスワークは国境を越えて高い評価を獲得しました。バンド名に刻まれた「独自の航路を拓く」という精神は、彼らの妥協なきサウンドメイキングそのものに息づいていたのです。