飲食店や居酒屋のメニューで混同されがちな「鳥刺し」と「地鶏のたたき」ですが、調理工程における衛生管理アプローチには明確な差異があります。
鳥刺しは、認可施設で解体された生肉の表面から深部に至るまで一切の加熱を行わず、薄切りにして提供される料理です。これに対し、地鶏のたたきは、成型された肉塊の表面を炭火や強火バーナー、あるいは熱湯等で外周部のみ急速加熱(殺菌)し、直ちに氷水等で冷却して旨味を閉じ込める手法をとります。
食肉科学の観点から見ると、健康な鶏の「筋肉深部」には通常カンピロバクター等の病原菌は存在しません。菌が付着するのは解体時に露出する「肉の表面」です。たたきという調理法は、表面を強火で焼き上げることで表層の付着菌を物理的に死滅させる合理的な殺菌アプローチを内包しています。
ただし、これはあくまで「解体時に内部へ菌が押し込まれていないこと」「加熱後に用いる包丁やまな板が完全に無菌化されていること」が絶対条件です。表面だけを黒焦げにしても、刃物を通じて切断面に菌が移れば、たたきの安全性は一瞬で崩壊します。