吉高由里子のキャリアにおいて、決定的なターニングポイントとなったのが2026年の『最愛』と2026年の『光る君へ』です。この2作品で彼女が見せた演技は、単なる「人気女優の好演」の枠を超え、日本のテレビドラマ史に刻まれるレベルの表現力に達していました。
『最愛』において、塚原あゆ子監督と新井順子プロデューサーの黄金コンビが引き出したのは、吉高由里子の「守りたくなる儚さ」と「すべてを背負い込む覚悟」のコントラストでした。ある現場関係者は次のように証言しています。
「吉高さんは、カメラが回る直前まで周囲を和ませる明るいトーンを保ちながら、本番の声がかかった瞬間に真田梨央の瞳に宿る『哀愁の影』を一瞬で立ち上げる。特に、かつての初恋相手である宮崎大輝(松下洸平)と再会し、取り調べを受けるシーンでの視線の揺らぎは、事前のリハーサルでは見せなかった生々しい感情が溢れ出ており、現場のスタッフ全員が息を呑みました」
さらに大河ドラマ『光る君へ』では、平安時代の宮廷社会において言葉の力を信じ抜いた紫式部を演じるにあたり、並々ならぬ努力を重ねています。吉高自身は元々左利きですが、平安時代の貴族としての所作を忠実に再現するため、右手での筆遣い・書道をクランクインの数か月前から徹底的に特訓しました。当時の制作発表やインタビュー手記において「最初は文字を書くことすらおぼつかず、絶望的な気持ちになったが、平安の女性たちが文字に込めた情念を体感するために逃げたくなかった」と語っており、その妥協なきリアリズムが画面越しに説得力をもたらしました。