柴田作品の最大の魅力は、大人の苦みを含んだリアルな人間ドラマにある。きらびやかな衣装と華やかなステージングの奥底に流れるのは、決して思い通りにはならない人生の哀愁だ。男役が魅せる張り詰めたダンディズムと、それに寄り添いながらも凛とした芯を持つ娘役の葛藤。双方がぶつかり合う台詞の応酬は、観る者の呼吸を止めるほどの迫力を放つ。
華麗なミュージカルの楽しさと、人間の業を描き出すストレートプレイの深み。その双方を絶妙なバランスで融合させた手腕は、宝塚におけるロマンチック・レビューの伝統と並び立つ、劇団の揺るぎない礎となった。台詞の「間」ひとつに込められた登場人物の息遣いこそ、柴田演出の真骨頂である。