本作の誕生は、稀代のメロディメーカーであり元レピッシュのキーボーディストとしても知られる故・上田現と、奄美大島で生まれ育った元ちとせという二人の異才の邂逅によってもたらされました。インディーズ時代にカヴァーミニアルバムを発表していた元ちとせの圧倒的な歌声に惚れ込んだ制作陣が、メジャーデビュー曲の制作を上田現に依頼したことがすべての始まりです。
上田現は彼女の歌声を徹底的に研究し、奄美民謡「シマ唄」特有のこぶしや裏声の装飾歌唱法である「グイン」の響きを最大限に引き出すメロディラインと詩世界を構築しました。一般的なポップスの定石をあえて外し、五音音階(ペンタトニックスケール)を意識しながら、どこか土俗的で、アミニズムの息吹を感じさせる構築美を創り上げたのです。
当時のインタビューや関係者の証言によると、上田現は元ちとせの声の中に「生と死を同時に包み込む力」を感じ取っていたといいます。奄美の自然の厳しさと美しさ、海を渡ってやってくる神(ニライカナイ信仰)の気配。そうした土着的な死生観と、上田現の持つ耽美でセンチメンタルな文学性が奇跡的な化学反応を起こし、唯一無二のデビュー曲として結実しました。