乃が美食パン大量閉店の真相と現在|泥沼対立の裏側と味の真価

乃が美食パン大量閉店の真相と現在|泥沼対立の裏側と味の真価

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乃が美の物語を語る上で欠かせないのが、乃が美創業者阪上雄司の経歴だ。大阪府出身の阪上氏は、飲食店経営やプロレス団体の運営など多岐にわたるビジネスを手がけた異色の起業家である。高齢者施設を慰問した際、入所者が「パンの耳が固くて残してしまう」と話していた光景を目にしたことが、耳まで柔らかい食パンを開発する原点となった。

2013年に創業された乃が美は、卵不使用、オリジナルブレンドの小麦粉、生クリーム、蜂蜜、そしてバターと独自配合のマーガリンを組み合わせることで、焼かずにそのままちぎって食べる「生食パン」という全く新しい食文化を創出した。2016年には「パン・オブ・ザ・イヤー」金賞を受賞し、メディアへの露出とともに一大ブームの起爆剤となった。

しかし、この大躍進の裏には「単一商品依存(一本足打法)」という致命的なリスクが潜んでいた。高級生食パンブーム終焉を決定づけた構造的要因は主に以下の3点に集約される。

  • 日常食ではなく「嗜好品・手土産」というポジション:1本(2斤)1,000円前後のパンを毎朝の主食として買い続ける家庭はごく一部であり、多くの一般層にとっては「たまの贅沢」や「人へのおもたせ」にとどまった。
  • 競合乱立によるパイの奪い合い:「銀座に志かわ」や著名プロデューサーが仕掛けた奇抜なネーミングの食パン店が乱立し、市場が一気に飽和。希少価値が瞬く間に薄れた。
  • 生活防衛意識の高まりと原材料高:ウクライナ情勢以降の小麦・油脂・エネルギーコストの世界的高騰により、乃が美食パン値段と値上げを余儀なくされ、消費者の割高感に拍車をかけた。

創業者が経営の一線から退き、投資ファンドや外部経営陣が関与を強める中で、創業時の「クラフトマンシップ」と急拡大を求める「資本の論理」の乖離が露呈したとも囁かれている。

高橋 健太
著者

高橋 健太

Webメディアでの編集・執筆歴10年。読者の好奇心を刺激するストーリー作りを心がけています。