仕入れ値のグラフは右肩上がりを続け、食用油も米も以前の相場には戻らない。全国の飲食店が値上げの告知文をレジ横に貼り出す中、竹亭のカウンター越しに見える光景は極めてシンプルだ。
飾らない。無駄口もない。客が席に着いてから膳が運ばれるまでの流れるような連携こそが、この店の最大の武器だ。キャベツを刻む音、味噌汁を注ぐ手際、揚げ油の温度を見極める視線。派手なデジタル券売機やタブレット端末に頼ることなく、人が人の動きを読み切ることで回転率を高め、過剰な間接コストを削ぎ落とす。結果として、客は値上げの重圧に怯えることなく、目の前の揚げたてに集中できる。
「この値段でこの肉を出されたら、他所は手も足も出ないよ」。鹿屋の出張帰りに立ち寄ったという男性会社員は、茶碗を片手に小さく笑った。