本作の最大のハイライトといえば、なんといっても見開きいっぱいに描かれた「全84種類のユニークなパン」が並ぶページです。「かにパン」「カメパン」などの動物から、「テレビパン」「じどうしゃパン」「カメラパン」といった乗り物・家電、さらには「ゆびわパン」「ソフトクリームパン」まで、子どもの夢を具現化したようなパンがずらりと並びます。
この名シーンが生まれた背景には、かこさとし氏の青年時代の活動が深く関わっています。かこ氏は川崎のセツルメント(地域社会福祉活動)で、長年子どもたちに紙芝居や絵本の読み聞かせを行っていました。そこで子どもたちが見せた旺盛な好奇心や、「こんなパンが食べたい!」という自由なリクエストのスケッチが、この84種類のパンの直接の原点となっています。
単なる作者の思いつきではなく、「子どもたちの生の声を忠実にすくい上げた結晶」だからこそ、何十年経っても色あせず、ページを開くたびに子どもたちを釘付けにする圧倒的な熱量を持っています。