丸嘉小坂漆器店の代名詞とも言えるのが、2014年に立ち上げられたオリジナルブランド「百色(hyakushiki)」です。透明な硝子の裏側から漆を塗り重ねる「漆硝子」の手法により、器の表面はガラス本来の光沢と滑らかさを保ちつつ、裏側から漆の深みある色彩や金銀の箔が透けて見えるという、かつてない視覚体験を実現しました。
この漆硝子「百色」が人々を魅了してやまない理由は、単なる奇抜さではなく、光と影を巧みに計算した構造美にあります。ガラス越しに見る漆は、木製漆器特有の重厚感とは一線を画し、まるで水底に揺らめく絵画のような瑞々しさを放ちます。特にテーブルコーディネートや料理愛好家の間で支持されているのが、ステム(脚)やボウル底に繊細な漆塗りを施したワイングラスやすずろシリーズです。ワインや日本酒を注いだ際、液体の屈折によって漆の色漆や金箔がキラキラと揺らめき、晩酌のひとときを劇的な時間へと昇華させます。
さらに近年では、器の枠組みを超えてガラスと漆が本来持つ「液体としての有機的な美しさ」を表現した漆硝子ジュエリー「Jeweki(ジュエキ)」の新作コレクションを発表するなど、工芸とファッションを越境する意欲的なクリエイションを展開しています。単なる生活道具の枠を超え、「日常に光の陰影を取り込むアートピース」として受容されている点こそ、丸嘉小坂漆器店が幅広い世代に支持される決定的な理由です。