米津玄師のアルバム『BOOTLEG』を飾る名曲「飛燕」。その歌詞に込められた深いメッセージやタイトルの由来を紐解くと、当時の米津が抱いていた強い創作倫理が見えてきます。前作『Bremen』で美しい理想郷を目指した米津は、本作『BOOTLEG(海賊版)』において、他者との関係性や自らが受けてきた無数の影響を肯定し、泥臭く現実と対峙する道を選びました。
歌詞の中には「風が吹き荒ぶ」「翼を広げて」といった情景描写が巧みに配置されています。ここで描かれる「翼」は、決して万能の飛行能力を意味していません。むしろ、雨風に打たれ、泥にまみれ、時には折れそうになる不完全な翼です。
「誰もが祝福されるべき存在でありながら、同時に呪いのような重荷を背負って生きている」というテーマは、米津玄師の全キャリアに通底する哲学です。「飛燕」の歌詞では、救いのない世界を嘆くのではなく、傷を負ったままでも一歩前へ進み、風を受け止めて飛び立つことの尊さが力強い筆致で歌い上げられています。