「異常音が鳴っていないから大丈夫」「ブレーカーが落ちていないからまだ使える」と、設備の更新を後回しにする事業者は少なくありません。しかし、キュービクル内部の機器は24時間365日通電し続けている消耗品の集合体です。目に見える異常がなくても、絶縁材料の劣化や金属パーツの腐食は着実に進行しています。
更新を怠り、高経年化した設備を放置し続けた場合に直面する最大のリスクが「波及事故(もらい事故)」です。
自社敷地内の受変電設備でショートや地絡(漏電)などの絶縁破壊が発生した際、PAS(高圧気中負荷開閉器)などの保護装置が正常に作動しないと、その事故電流が電力会社の配電用変電所にまで逆流します。その結果、周辺地域一帯のオフィスビル、信号機、駅、病院、住宅街などを巻き込む大規模な地域停電を引き起こしてしまうのです。
波及事故を起こした場合、復旧作業に伴う費用だけでなく、近隣企業が被った営業損失や電化製品の破損損害など、数千万円から1億円超の損害賠償請求に発展した実例も報告されています。さらに企業の社会的信用の失墜は計り知れません。
機器ごとの推奨更新時期(更新推奨年数)は、日本電機工業会(JEMA)などの指針により以下のように示されています。
- PAS / UGS(柱上・地中線用開閉器):約10〜15年(最重要の安全装置)
- トランス(変圧器):約15〜20年
- 高圧遮断器(VCB):約15〜20年
- 進相コンデンサ / 直列リアクトル:約15年
- 避雷器(LA):約15年
- 外箱(キャビネット鋼板):約15〜20年(塩害・雨風による腐食に注意)
税法上の法定耐用年数(15年)と、工学的な物理寿命(15〜20年程度)はほぼ合致しています。設置から15年を超えたキュービクルは、いつ重大インシデントを起こしてもおかしくない「レッドゾーン」にあると認識すべきです。