『さよなら』が世代や国境を越えて愛される理由は、歌詞の切なさだけでなく、緻密に構築されたサウンドメイクとギターおよびコード進行の美しさにあります。
楽曲のキーはA♭メジャー(変イ長調)。アコースティックギターで演奏する際はカポタストを1フレットに装着し、Gメジャーのフォームで演奏されることが一般的です。このキー設定により、開放弦の豊かな響きと、小田和正の代名詞であるハイトーンボイスの最もエモーショナルな声域が見事にシンクロします。
特筆すべきは、Aメロからサビにかけてのコード進行です。哀愁を帯びたマイナーコード(EmやAm)と、光が差し込むようなメジャーコード(CやG、D)が絶妙に行き交い、リスナーの感情を揺さぶります。また、アコースティックギターのアルペジオに寄り添うように重なるフェンダー・ローズの温かいエレクトリックピアノの音色、そして間奏で見せる鈴木康博と松尾一彦による情感豊かなギターソロは、当時のアメリカンAOR(Adult Oriented Rock)やウエストコーストサウンドからの影響を日本的な叙情詩へと見事に昇華させた証拠といえます。