神話に登場する半人半馬の怪物を想起させる「ケンタウロス」という呼称は、世界保健機関(WHO)や国立感染症研究所が定めた公式名称ではありません。発端は、ある海外の科学愛好家がTwitter(現X)上で「BA.2系統と他の変異株の特徴を併せ持つ強力な変異」という文脈から、ギリシャ神話のケンタウロスになぞらえて投稿したことでした。
当時、アルファ株やデルタ株のようにギリシャ文字単体で呼ばれなくなったオミクロン株の細分化(BA.2、BA.5など)に対し、メディアや一般層にとって記号的な名称は直感的な理解が難しい状態でした。そこに登場したキャッチーな「ケンタウロス」という通称は、ネット空間で瞬く間に拡散し、一部の海外大手メディアが引用したことで世界的な定着を見せました。
しかし、学術的にはあくまで「BA.2.75系統」であり、神話のような凶悪な性質をウイルスそのものが意図して宿したわけではありません。インパクトのある俗称が先行したことで、実態以上のパニックが一部で引き起こされた側面は否定できません。