輪島功一というアスリートの凄みを理解するには、その特異な経歴と前人未到の戦績を振り返る必要があります。1943年生まれ、北海道の厳しい開拓地育ち。中卒後に上京し、土木作業員などを経てボクシングを始めたのは25歳という極めて遅い年齢でした。
エリート街道とは程遠い場所から這い上がった輪島氏の武器は、教科書を無視した変則スタイルでした。リングの床すれすれまで屈み込んでから跳び上がるようにアッパーを突き上げる「カエル跳びパンチ」、さらには視線をあえて逸らして相手のリズムを乱す「あっち向いてホイ戦法」など、トリッキーな奇策の数々は日本中のお茶の間を沸かせました。
しかし、奇抜さの裏にあったのは、血のにじむような反復練習と計算し尽くされた戦略でした。一度失った世界王座を二度にわたって奪還した「世界王座通算3度獲得」は、当時の日本ボクシング界では奇跡と称された快挙です。
リング上で見せた壮絶なダウンの応酬、そして立ち上がる姿。自著や手記で語られた「人間、打たれたって痛いのは一瞬だ。そこで諦めるから一生痛い思いをするんだ」という言葉は、今も多くの人々の心を打つ名言として語り継がれています。