作品を包み込む「器」そのものにも、比類なき物語が刻まれている。このミュージアムの主棟となっているのは、明治期に建てられた旧陸軍第九師団司令部庁舎と旧金沢偕行社という、ふたつの貴重な歴史的洋風木造建築を移築・復元したものだ。軍都としての記憶を宿す建築物が、時空を超えて平和と美の象徴へと生まれ変わった。その歴史の皮肉とロマンが、空間に重層的な奥行きを与えている。
柔らかな自然光が差し込む上げ下げ窓、歩くたびに微かに響く木の温もり。白とパステルグリーンを基調とした端正な外観は、金沢の豊かな緑と見事な調和を見せる。コンクリート打ち放しの無機質なホワイトキューブでは決して味わえない、歴史の重厚さと工芸の精緻さが共鳴し合う空間体験こそ、この地を訪れる最大の醍醐味と言っていい。