氷上のシンデレラと持て囃されたケリガンに対し、ハーディングの生い立ちは苛酷を極めた。オレゴン州の極貧家庭に生まれ、実母ラヴォナからは言葉と身体の両面で虐待を受け続ける日々。スケートリンクだけが彼女の唯一の居場所だった。タバコを吸いながら自家製の派手な衣装を縫う母と、粗暴で荒削りな娘。フィギュアスケート特有の上流階級的な優雅さとは程遠い存在だった。
しかし、彼女の技術は本物だった。1991年、全米女子選手として史上初めて最高難度のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を成功させ、一躍時の人となる。天賦の才を持ちながらも、審判員からは「品格」を理由に正当な評価を与えられないジレンマ。努力だけでは超えられない見えない壁が、彼女を次第に追いつめていった。この波乱万丈な生き様こそが、後に良質な伝記映画の格好の題材となったのだ。