鉄筋かぶり厚さ不足が招く倒壊危機|建築基準法とJass5の真相

鉄筋かぶり厚さ不足が招く倒壊危機|建築基準法とJass5の真相

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コンクリート内部の鉄筋は、本来であれば半永久的に錆びない環境に置かれています。生まれたてのコンクリートはセメントの水和反応によってpH12〜13という強アルカリ性を示し、鉄筋の周囲にナノメートル単位の極めて強固な「不動態被膜」を形成するからです。この被膜が存在する限り、内部の鉄筋が酸化して錆びることはありません。

この強アルカリ性の盾をじわじわと破壊するのが、空気中に存在する二酸化炭素(CO2)です。コンクリート内部に二酸化炭素が浸透すると、水酸化カルシウムと反応して炭酸カルシウムへと変化し、pHが10以下へと低下します。これこそが「コンクリート中性化と鉄筋腐食の真相」です。中性化領域が鉄筋の表面に達した瞬間、鉄筋を守っていた不動態被膜は音を立てて崩壊し、水分と酸素の攻撃にさらされた鉄筋は急速に赤錆を発生させます。

鉄筋が腐食すると、錆の体積は元の鋼材の約2.5倍に膨張します。狭いコンクリート内部で強烈な内圧が発生し、外側のコンクリートを内側から破壊する「爆裂現象(スポーリング)」を引き起こします。表面のコンクリートが剥落して鉄筋が完全に露出すれば、水分と空気の供給は一気に加速し、鉄筋の有効断面積はみるみる減少していきます。

かぶり厚さ不足の恐ろしさは、中性化の進行速度を表す物理法則「二乗則(中性化深さ=係数×時間の平方根)」にあります。中性化が鉄筋に到達するまでの時間は、かぶり厚さの2乗に比例します。設計上で40mm必要とされる部位において、施工不良でかぶり厚さが半分の20mmしかなかった場合、鉄筋が錆び始めるまでの耐用年数は「2分の1」ではなく、2乗に反比例して「4分の1」へと激減します。60年持たせるはずだった躯体が、わずか15年ほどで内部破壊を起こし、大地震の揺れに対して脆く崩れ落ちる致命的な状態に陥る計算です。数ミリの誤差が倒壊危機に直結すると警告される理由は、まさにこの幾何級数的な劣化速度の加速にあります。

山口 彩花
著者

山口 彩花

グルメと旅を愛するフリーライター。全国各地の隠れた魅力を独自の視点から紹介します。