金歯の医者がリザを人質に選んだ根本的な理由は、2人の間に横たわる尋常ならざる絆の深さにあります。リザの亡き父ベルトルト・ホークアイは、焔の錬金術を編み出した天才錬金術師であり、その膨大な研究成果のすべてを幼いリザの背中に「秘伝の刺青」として刻み込みました。
父の死後、リザはその背中の刺青をマスタングに見せることで焔の秘術を託しました。しかし、イシュヴァール殲滅戦でその炎が多くの命を奪う殺戮の道具となったことに苦悩したリザは、二度と新たな焔の錬金術師が生まれないよう、自らの背中をマスタングの炎で焼いて刺青を焼き消すことを懇願した過去を持っています。
「背中の秘伝を焼き、罪を背負って共に歩む」という不可逆の誓いを交わした2人は、単なる上官と部下を超えた「共犯者」であり、精神的な魂の半身でした。だからこそ、リザの命の危機はマスタングの理性を完全に破壊しうる唯一の弱点として利用されたのです。