名店と呼ばれるベーカリーの塩パンを割ると、中心部に大きな空洞があり、底面がまるでクロワッサンのように香ばしく揚がっています。この独特な食感の秘密は、生地内部に包まれたバターの融解と気化現象にあります。
焼成中にオーブンの熱が加わると、中心の有塩バターが急速に溶け出します。その際、バターに含まれる約16%の水分が水蒸気となって膨張し、生地を中心から押し広げて特徴的な空洞を形成します。そして、溶け出た乳脂肪分が生地の底から染み出し、天板の上で高温のバタープールとなって生地の底面を「揚げ焼き」にする状態を作り出します。
つまり、塩パンにおいてバターが溶け出る現象自体は失敗ではなく、意図された物理変化です。重要なのは、「過剰に流れ出させず、適度な量を底面に留めて揚げ焼きに昇華させる密閉度」を成形段階でコントロールすることにあります。