NHK『趣味の園芸』などの専門メディアでも、初夏の風物詩としてたびたび取り上げられる花菖蒲。しかし、アヤメやカキツバタとの見分けがつかず、なんとなく眺めて終わってしまう来園者も少なくない。その決定的な鑑賞ポイントは、花弁の根元にある「黄色い目型の模様」と、花びらの繊細な縮れ、そして水辺ではなく湿地を好むその生息の妙にある。
通が唸る見どころは、曇天や小雨の日にこそ際立つ。晴天の強い光では白飛びしてしまう淡い青や藤色の階調が、しっとりと水分を含んだ大気の下では深く沈み込み、驚くほど艶やかな発色を見せるのだ。雨滴をたたえてわずかに頭を垂れる姿には、古くから日本人が愛してきた「もののあわれ」が凝縮されている。天気が崩れそうな予報の日こそ、傘を片手に訪れる価値がある。