反物質実験の過酷な拘束生活の中で、死神の運命を決定づけたのが、柳沢の婚約者であり監視役兼実験助手として派遣されてきた雪村あぐりの存在でした。彼女は昼間は椚ヶ丘中学校3年E組の担任教師を務め、夜は研究室で死神のバイタルチェックを行っていました。
あぐりは、柳沢から日常的にモラルハラスメントを受けながらも、決して生徒への愛情と笑顔を失わない心優しい女性でした。奇抜な柄のTシャツを着ては死神に無邪気に話しかけ、彼を「危険な実験動物」ではなく、心を持つ「一人の対等な人間」として接し続けました。
誰からも愛されず、誰も信じずに生きてきた死神にとって、あぐりの無償の善意と温もりは未知の衝撃でした。彼女の話す「落ちこぼれとされるE組の生徒たち」の悩みを聞き、死神が暗殺者としての洞察力から勉強や指導のアドバイスを返すうちに、2人の間には言葉を超えた深い信頼と愛情が芽生えていきました。暗殺者としてしか機能していなかった彼の知性が、初めて「他者を育てるため」に使われた瞬間でした。