英語の「sexual」は、品詞として形容詞に分類されます。直訳すると「性の」「性的な」「有性生殖の」という意味を持ち、単独で概念を表す名詞として使われることは本来ありません。日本語の会話で「セクシャル」と発音される場合、大半は複合語の一部、すなわち後ろに別の名詞を伴う接頭辞的な役割を果たしています。
代表的な例が、職場環境を揺るがす「セクシャルハラスメント」や、心身の健康状態を指す「セクシャルヘルス」、あるいは「セクシャルマイノリティ」という表現です。これらはすべて「性的な嫌がらせ」「性に関する健康」「性的な少数者」と訳せば構造が明快に理解できます。
一方、混同されやすい「セクシャリティ(sexuality)」は名詞です。個人の性に関するあり方全般、すなわち「性的指向」「性自認」「性的嗜好」「性的な欲望の持ち方」など、人間が持つ性の包括的なグラデーションそのものを指します。「彼のセクシャリティを尊重する」「多様なセクシャリティ」と表現するのが文法上も概念上も正しいアプローチです。「セクシャル」を名詞のように扱い、「自分のセクシャルに悩む」と使うケースが散見されますが、正確には「自分のセクシャリティに悩む」と表現するのが適切です。
また、俗語として「あの人はセクシャルな魅力がある」と言われることがあります。これは「性的魅力(セックスアピール)」や官能的な雰囲気を指す表現として定着していますが、学術的・法的な文脈における「セクシャル」とは文脈が完全に切り離されている点に注意が必要です。