世間には「好きなことを仕事にすれば幸せになれる」という言説が溢れていますが、キャリア形成の観点から見れば、これは極めてリスクの高い誤解を孕んでいます。ここに、適職選びにおける最大の盲点が存在します。
「好き」という感情は、多くの場合「受容(インプット)」の心地よさに由来します。映画が好き、ゲームが好き、ファッションが好き、といった感情は、完成されたサービスやプロダクトを享受する側だからこそ成立するものです。しかし、仕事とは常に「生産(アウトプット)」であり、クライアントの要望に応え、理不尽なトラブルを解決し、納期とコストのプレッシャーに耐える泥臭い作業の連続です。
「好き」を唯一の軸にして飛び込むと、仕事の厳しさに直面した瞬間に「こんなはずではなかった」「好きだったものすら嫌いになった」という手痛い挫折を味わいます。長期的に安定した幸福度を保っているビジネスパーソンが選んでいるのは、「特別に情熱はないが、やっていて苦痛を感じないこと」「他人が嫌がるのに、自分にとっては息をするようにこなせること」です。「不快・ストレスの最小化」こそが、燃え尽き症候群を防ぐ最も堅牢な防壁となります。