源孝志氏の代表作として名高いのが、NHKで放送され熱狂的な支持を集めた『京都人の密かな愉しみ』シリーズである。千年の都に生きる人々の機微、伝統とモダンが交錯する街並み、四季折々の移ろいを息をのむような美しい映像で描き出し、数々の賞に輝いた。
『スローな武士にしてくれ』や『ライジング若冲』など、時代劇や文化を題材にしたドラマでも、型にはまらない斬新な切り口で新風を巻き起こしてきた。これらの作品に共通して流れているのは、失われゆく美しいものへの敬意と、不条理な現実に抗いながら生きる人間への温かな眼差しである。
夫が作り出す滋味あふれる映像美の根底には、病床で懸命に命を輝かせる佳那晃子への祈りにも似た想いが通底しているのではないか。作品を観る者の心を打つ静謐な力強さは、過酷な現実と向き合う表現者の魂そのものである。