口から摂取された糖が体内のどこへ向かうのか。このシンプルな疑問に対する答えこそが、栄養生化学における最大の焦点だ。ブドウ糖(グルコース)は、太古の昔から生命活動における最優先のエネルギー通貨として最適化されてきた。小腸から吸収されると速やかに血流に乗り、脳、骨格筋、赤血球をはじめとする全身のあらゆる細胞に取り込まれて消費される。このとき、細胞のゲートを開ける鍵の役目を果たすのが、膵臓から分泌されるインスリンだ。私たちの体は、グルコースを全身で分散処理するための極めて堅牢なネットワークを備えている。
一方で、果糖(フルクトース)の辿るルートは劇的に異なる。フルクトースの専用輸送体を介して腸管を抜けた果糖は、全身の細胞にはほとんど分配されない。血流に乗った果糖の約8割から9割は、門脈を通って肝臓へと直接送り込まれる。全身の筋肉や脳で手分けして燃焼できるブドウ糖とは異なり、果糖の処理負担はほぼ一手に肝臓が引き受ける構造になっているのだ。この「代謝器官の極端な偏り」こそが、あらゆる代謝疾患の引き金となる。