せっかく狭き門を突破して就いた公務員の職責を投げ打ち、再び別の公務員を目指す人々の内情には、外部からは見えにくい切実な背景が存在します。公務員に特化した転職支援サービスの動向や当事者たちの手記を精査すると、公務員を辞めて公務員になる理由の根底には、民間志向とは異なる3つの典型的な動機が浮かび上がってきます。
第1に「勤務地と家庭環境の是正」です。国家公務員として採用されたものの、広域異動(ブロック内や全国転勤)によって生活基盤が定まらず、家庭の事情や介護、子育てを機に「地元市役所」や「特定の都道府県庁」へ腰を落ち着けたいという需要です。地方公務員であっても、配偶者の転勤や実家へのUターンを理由に隣接自治体への鞍替えを模索するケースは日常茶飯事となっています。
第2に「業務スコープのミスマッチ」が挙げられます。特に基礎自治体である市役所では、生活保護、納税、住民票交付など窓口最前線でのクレーム対応や定型業務の連続に疲弊する若手職員が少なくありません。「より広域的な政策立案や産業振興に携わりたい」と都道府県庁を目指すパターンや、逆に国や県の抽象的な広域行政に手応えを感じられず、「住民の顔が見える地域密着の支援がしたい」と基礎自治体へ降りていくパターンなど、双方のベクトルで移動が起きています。
第3は「組織文化と人間関係のリセット」です。公務員組織は流動性が低く、一度人間関係が破綻したりパワハラが常態化した部署に配属されたりすると、人事異動でも逃げ場が限られます。身分保障や年金制度、福利厚生の恩恵は手放したくないが、現在の職場環境からは物理的に脱出したいという防衛本能が、官から官への選択を後押ししています。