このブランドが辿ってきた歴史は、まさにパーソナルケア産業におけるマーケティングの教科書と言える。1937年にウィリアム・ライトスミス商会から誕生したオールドスパイスは、当初クラシックなシェービング用品としてアメリカの父親世代に愛されてきた。しかし1990年に世界的消費財メーカーのプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)が買収したことで、その運命は劇的な転換を迎える。
古臭いイメージを完全に払拭したのが、2010年に公開された歴史的キャンペーン「The Man Your Man Could Smell Like」だ。元NFLプレイヤーのアイザイア・ムスタファを起用したユーモア溢れるワンカットCMは、瞬く間にインターネット空間を席巻。続いて俳優のテリー・クルーズが上半身裸で叫び散らすパワフルな怪作広告が投下され、ブランドは一気にZ世代やミレニアル世代のメンズグルーミングの象徴へと変貌を遂げた。男性特有の汗の悩みを力技のエンターテインメントへと昇華させた広告戦略こそが、海を越えた日本でもカルト的な信奉者を生み出し続ける原動力である。