熊の素朴な食生活は、近年ハイクオリティな映像作品を通じても世界中に共有されつつある。アラスカの壮大な自然を舞台にした『ディズニーネイチャー クマの親子の物語』では、過酷な環境下で母親が子熊に教え込む最初の食事が、干潟の貝や広大な草地に生えるカヤツリグサであることが印象的に描かれた。巨大なヒグマが群れをなして黙々と草を食む姿は、従来の猛獣イメージを鮮やかに裏切る。
世界最高峰の自然番組を手掛けるナショナル ジオグラフィックの特集や、Netflixで配信されている先鋭的なネイチャードキュメンタリーシリーズでも、カメラは狩りではなく昆虫採集やベリー摘みに夢中になる熊の姿を執拗に捉えている。国内に目を向ければ、NHKの『ダーウィンが来た!』やNHKオンデマンドのアーカイブ映像において、ツキノワグマが巧みに樹上に棚(クマ棚)を作り、ドングリを房ごと手繰り寄せて食べるコミカルかつ合理的な職人技が幾度となく紹介されてきた。映像技術の進化によって、神話化された猛獣のヴェールは剥ぎ取られ、森の植物相と共生するリアルな生態が茶の間に届いている。