アフレコ現場でのエピソードも興味深い。通常、アニメの吹き替えは個別で行われることも少なくないが、ジュディとニックの掛け合いが生み出すライブ感は、互いの声を聴き合いながら作り上げられた熱量の賜物だ。ジュディのはじけるような高音に対して、ニックの低音で包み込むような返し。この声のコントラストが、作中で二人の距離が縮まっていくドラマをリアルに物語っている。
森川智之は過去のインタビューで、ニックの言葉の裏にある「本音と建前」の揺れ動きをいかに表現するか、細部までこだわり抜いたと明かしている。上戸彩の真っ直ぐな言葉を受けることで、ニックの心の氷解がより自然に観客へと伝わった。この二人の相乗効果こそが、日本語版『ズートピア』に命を吹き込んだ最大の原動力である。