長野県伊那市で生まれ育った常田大希。その実父は、実にユニークなキャリアと感性の持ち主だ。本職は精密機器メーカーに勤めるロボットエンジニア。確固たる技術職でありながら、その裏の顔は熱狂的なジャズピアニストという刺激的な一面を併せ持っていた。
休日の常田家には、いつもレコード盤の回転音と鍵盤の音色が響いていた。ジャズをこよなく愛する父は、独学で習得した腕前でインプロヴィゼーション(即興演奏)を日常的に楽しんでいたという。理論と構造を重んじるエンジニアリングの世界と、その場の感情を音に吐き出すジャズの世界。一見すると対極にある二つの領域を自在に往還する父の姿は、幼少期の兄弟に強烈なインパクトを与えた。