「エアインテーク」という言葉は、本来航空機や自動車のエンジンに空気を送り込む吸気口(Air Intake)を指す工学用語です。アニメや漫画のキャラクター表現において、前髪の付け根がアーチ状に浮き上がり、額との間に明確なトンネル状の空間ができる造形が、レーシングカーのボンネットに設けられた吸気ダクトに酷似していたことから、当時のネットコミュニティ(主に2ちゃんねる等の掲示板)で自然発生的に呼ばれるようになりました。
この髪型が爆発的に認知された契機は、1990年代後半から2000年代初頭にかけて一大ムーブメントを巻き起こしたKey制作のビジュアルノベル作品群にあります。原画家・樋上いたる氏らが手掛けた『Kanon』(1999年)や『AIR』(2000年)、『CLANNAD』(2004年)などのヒロインたちに見られる、頭頂部や前髪をふんわりと立ち上げるフォルムは、当時の二次元美少女デザインのスタンダードを決定づけました。
作画技法の歴史的観点から見ると、この造形は「前髪でキャラクターの眉毛や瞳を隠さず、豊かな表情変化を読者に伝える」という演出上の要請から生まれた必然的な工夫でした。平面的になりがちなセル画や2Dイラストにおいて、前髪の根元に空間(陰影)を作ることで、頭部の奥行きと躍動感を同時に表現する画期的なアプローチだったのです。