『君たちはどう生きるか』結末の真相と評価|宮崎駿が遺した問い

『君たちはどう生きるか』結末の真相と評価|宮崎駿が遺した問い

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物語の舞台は、太平洋戦争末期の日本。火災によって母・ヒサコを失った少年・牧眞人(まき・まひと)は、軍需工場を経営する父と共に東京を離れ、母の実家である広大な屋敷へと疎開します。そこで出迎えたのは、亡き母の妹であり、父の新たな妻となって身重の身体を休める夏子(なつこ)でした。母への強い思慕と、義母となった叔母への受け入れがたい感情に苛まれる眞人は、転校初日に自ら石で側頭部を殴りつけ、深い傷を負って自室に引きこもります。

孤独に沈む眞人の前に現れたのが、人間の言葉を操る不気味な青サギでした。「母君はお待ちです、死んではおられない」と誘惑された眞人は、突如として屋敷の裏手にある鬱蒼とした森の中に姿を消した夏子を救い出すため、明治時代に失踪した大叔父が建てたという謎の洋館の「塔」へと足を踏み入れます。そこは、生と死が渾然一体となり、時空が歪んだ幻想的な「下の世界」でした。

多くの観客が気にするのが、吉野源三郎の児童文学名著『君たちはどう生きるか』との違いです。本作は同名小説のアニメ化ではありません。劇中で眞人が亡き母の遺品として同書を見つけ、ページをめくりながら涙を流すシーンが描かれるのみです。吉野版が叔父さんとコペル君の対話を通じて「人間としてどうあるべきか」「他者への共感と社会認識」を説いた道徳的教養小説であるのに対し、映画はジョン・コナリーのファンタジー小説『失われたものたちの本』のエッセンスを取り入れつつ、宮崎駿自身の戦争体験と母への愛憎、そして盟友たちとの創作闘争を色濃く投影した私小説的ファンタジーに仕上げられています。

井上 凛
著者

井上 凛

心身ともに健康で持続可能なライフスタイルをテーマに、最新のウェルネストレンドを発信中。