「海岸にクジラが打ち上げられると、近いうちに巨大地震が起きる」という言説は、オカルトや都市伝説の枠組みを超え、ニュースのコメント欄やSNSのトレンドに定着しています。この噂がここまで強固に信じられる背景には、過去に発生した象徴的な出来事の存在があります。
最も頻繁に引き合いに出されるのが、東日本大震災前の漂着事例です。未曾有の揺れと津波が東日本を襲う約1週間前、2011年3月4日に茨城県鹿嶋市の海岸へイルカの仲間であるカズハゴンドウ約50頭が打ち上げられました。さらに遡れば、2004年12月のスマトラ沖地震の直前にもオーストラリアやニュージーランドで集団座礁が発生していた事実が、人々の記憶に「前兆」として強烈に焼き付いています。
こうした状況から、ネット上では「クジラ打ち上げ 地震の前兆」という結びつけが反復され、新着情報が出るたびに南海トラフ巨大地震 前兆説と絡めた言説が急速に膨れ上がります。しかし、科学的な調査報道の現場から事実を洗い直すと、そこには人間特有の「記憶の選択的抽出」が介在している実態が浮き彫りになります。