写真表現の世界において、昭和ヌードを芸術の域にまで引き上げた決定的な存在が写真家・篠山紀信です。1970年代から雑誌『GORO』などで展開された「激写」シリーズは、スタジオに閉じこもっていたグラビア撮影を屋外へと連れ出し、ドキュメンタリーとヌードを融合させる革命を起こしました。
篠山紀信昭和名作写真集のなかでも特筆すべきは、1980年に発表された樋口可南子の写真集『Water Fruit』です。豊かな自然と水、そして陰影の中に女性の肉体を溶け込ませた本作は、社会的な大反響を呼び、ヌード写真を「男性の覗き見趣味」から「女性も憧れるアート」へと変革させました。
立木義浩、荒木経惟、沢渡朔といった巨匠たちもまた、それぞれ独自の美意識で昭和ヌード写真集を世に送り出しました。陰影のコントラストで女性の曲線美を描き出すライティング技術、大判・中判カメラによる緻密な描写力は、後世の写真界に計り知れない影響を与えています。このようにして確立された昭和ヌード芸術性の評価は、当時のタブーや規制を突破する文化的モニュメントとなっていきました。