たい焼きファンの間で特別な敬意を払われるのが、いわゆる「天然モノたい焼き」だ。一度に何匹も焼き上げる「養殖モノ(連番型)」とは一線を画し、重さ2キロ近くある一本手打ちの鋳型「一丁焼き」で一匹ずつ強火で直火焼きにする。
カチャカチャと鉄が擦れ合うリズミカルな金属音。立ち上る煙と焦がし小麦の芳香。和菓子職人は一瞬の油断もなく型を返し、火の通りを見極める。直火で一気に余分な水分を飛ばすため、皮の表面はまるで極薄のウエハースのように軽やかで香ばしい。盛岡の澄んだ空気の中で味わう天然モノの歯ごたえは、一度経験すると忘れられない鮮烈な記憶となる。