この劇的な産業構造の変化を、世界のクリエイターたちが見逃すはずもない。かつて業界に旋風を巻き起こした『A Film About Coffee』の時代、カメラが捉えていたのは職人の美学やサードウェーブの熱狂だった。しかし現在の潮流は大きく異なる。NetflixやAmazon Prime Videoといった世界的配信プラットフォームが競うように制作しているのは、過酷な現実とマネーの動きを暴く骨太なビジネスドキュメンタリーだ。
画面に映し出されるのは、美化された農村風景ではない。異常気象によって壊滅的な被害を受けた土壌を前に、アルゴリズムと対話しながら再生を試みる生産者たちの切迫した姿である。巨大ストリーミングサービスが農園の裏側に巨額の制作費を投じる背景には、世界中の消費者が「自分が消費するものの背景にある倫理と真実」に対して極めて敏感になっているという確固たるデータがある。ドキュメンタリーが告発する現場の実態は、いまやブランドの企業価値すら左右するほどの破壊力を持つに至った。