『男はつらいよ』を語る上で欠かせないのが、各作品のヒロインである「マドンナ」の存在です。歴代マドンナ一覧には、吉永小百合、八千草薫、大原麗子、竹下景子、樋口可南子、松坂慶子など、日本映画史を代表する大女優たちが名を連ねています。彼女たちは単なる恋愛対象ではなく、家庭の悩み、自立への葛藤、社会的な理不尽に直面する生身の女性として描かれました。寅次郎は彼女たちの苦悩に寄り添い、一切の見返りを求めずに去っていくことで、物語に気高い美しさを与えています。
舞台となった東京都葛飾区柴又は、今なお作品の世界観を色濃く残すロケ地巡りの聖地です。京成金町線・柴又駅前には寅次郎とさくらの銅像が佇み、帝釈天参道には草だんごで知られる老舗店舗が並びます。さらに「葛飾柴又寅さん記念館」では、撮影で実際に使用されたセットが移築保存されており、昭和の撮影現場の熱気や山田組のクラフトマンシップを肌で体感できます。