本作の魅力を語る上で欠かせないのが、アンティークショップ「地球屋」の主・西司朗と、猫の人形バロン(フンベルト・フォン・ジッキンゲン男爵)にまつわるエピソードです。作中でバロンの瞳には「エンゲルス・ツィマー(天使の部屋)」と呼ばれる特殊なガラス工芸が施されており、朝の光を受けると神秘的な輝きを放ちます。
このバロンには対となる貴婦人の猫の人形「ルイーゼ」が存在していました。若き日の西司朗がドイツに留学していた頃、ある店で出会ったバロンとルイーゼに一目惚れしたものの、修繕中だったルイーゼと離れ離れになってしまいます。必ず引き取りに戻ると約束した恋人の女性と共に戦争に巻き込まれ、二度とルイーゼとも恋人とも再会することができなかったという、あまりにも切ない過去が隠されています。
なお、一部で囁かれる「聖司死亡説」や「雫の妄想説」といった都市伝説がありますが、これらはジブリ公式によって完全に否定されています。後に制作された映画『猫の恩返し』は、雫が成長して書き上げた物語というスピンオフ的な位置づけで作られており、バロンが再び大活躍する姿を見ることができます。