本作最大の特徴は、キャスティングにプロの俳優を一切使わず、路上の現実を生きる当事者たちを抜擢したことです。とりわけ世界中の注目を集めたのが、主人公を演じたゼイン・アル=ラフィーアのその後の人生です。
撮影当時、ゼインはシリア内戦から逃れてベイルートに避難していた本物のシリア難民であり、12歳でありながら読み書きができない状態でした。しかし映画の世界的成功とカンヌでの高評価をきっかけに、事態は劇的に好転します。
- ゼイン・アル=ラフィーアの現在:国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の手続きを経て、2018年8月に家族全員でノルウェーの沿岸都市に移住。安全な生活環境のもとで学校教育を受け、読み書きや英語を習得しました。2021年にはマーベル・シネマティック・ユニバースの映画『エターナルズ』に端役として出演を果たすなど、現在も学業と並行して俳優としての活動を継続しています。
- 赤ん坊ヨナス役(トレジャー):作中でゼインと過ごした愛らしい赤ん坊ヨナスを演じたのは、ナイジェリア人の両親を持つ少女ボルワティフ・トレジャー・バンコレです。撮影中に母親が不法滞在で拘束されるトラブルがありましたが、映画製作チームの尽力により解放され、その後ケニアへ帰国して安全な環境で暮らしています。
- ラヒル役(ヨルダノス・シフェラウ):自身もエチオピア出身でベイルートに暮らす不法滞在者でした。劇中のラヒル同様、撮影期間中に書類不備で逮捕されるアクシデントに見舞われましたが、監督らの支援を受けて釈放され、映画公開を通じて自立への道を歩んでいます。