第200話における甘露寺蜜璃と伊黒小芭内の対話は、『鬼滅の刃』全編を通じても屈指の涙腺崩壊シーンとして語り継がれています。瀕死の重傷を負いながらも蜜璃の元へ駆けつけ、その身体を優しく抱き抱えた伊黒。二人の間に交わされた言葉は、死の恐怖を超越した純粋な愛の告白でした。
自身の不甲斐なさを詫び、「役に立たなくてごめんなさい」と涙を流す甘露寺に対し、伊黒小芭内は即座にその言葉を否定します。「そんなことはない 頼むからそんな風に言わないでくれ」「君と話しているととても楽しくて まるで普通の青年になれたような気がした」。自らの忌まわしい血筋と過去に囚われ、自らを呪い続けてきた伊黒にとって、屈託のない明るさで接してくれた甘露寺の存在こそが唯一の魂の救済だったのです。
薄れゆく意識の中、甘露寺蜜璃は伊黒に向けて最大の感情を言葉にします。
「私っ 私 伊黒さんが好き 私死にたくないよ…」「また人間に生まれ変われたら 私をお嫁さんにしてくれる?」
この問いかけに対し、両目を奪われ包帯を巻いた伊黒小芭内は、蜜璃を力強く抱きしめながら涙を流して答えます。「君が俺でいいと言ってくれるなら 絶対に君を幸せにする 今度こそ死なせない」。お互いの想いが通じ合いながらも、抱き合う二人の体温が急速に冷たくなっていく描写は、読者の胸を締め付けました。現世での肉体的な別れと引き換えに結ばれたこの魂の契約こそが、本作における最大の救いとなっています。