蒲郡ふ頭11号岸壁において、なぜこれほどまでに厳重な立ち入り禁止措置が講じられるようになったのか。その根底には、国際的な保安義務の履行と人命に関わる痛ましい事故の教訓という2つの決定的な要因が存在します。
第一の要因は、2004年に施行された国際船舶・港湾保安法、いわゆる蒲郡ふ頭11号岸壁のソーラス規制(SOLAS条約対応)です。米国同時多発テロ以降、国際航路を結ぶ船舶が寄港する港湾施設では、テロリストや危険物の侵入を水際で遮断するため、厳密な出入管理とフェンスの設置が国際義務となりました。蒲郡ふ頭11号岸壁は水深11メートルから12メートル級の大型船が直接接岸できる深水岸壁であり、外国船籍の貨物船や国際クルーズ船が頻繁に着岸します。条約の対象外とされる日であっても、保安設備の保全とセキュリティ基準の維持のため、恒久的なフェンスと監視カメラが稼働し続けています。
第二の要因として挙げられるのが、過去に三河港蒲郡地区の港湾施設で起きた車転落事故の経緯です。夜間、釣りのポイントへ無理に車を進入させ、暗闇の中で車輪を踏み外して海中へ転落する人身事故や、作業用ビット(係船柱)への衝突トラブルが複数回報告されました。港湾関係者へのヒアリング取材でも、「転落救助のために海上保安庁や消防が出動する騒ぎが過去に起き、港湾機能が丸一日ストップした経緯がある。事故が起きた場合、管理責任を問われるだけでなく尊い人命が失われるため、物理的なゲート閉鎖に踏み切らざるを得なかった」という切実な背景が語られています。