解散から長い年月が経った現在、ネット上の一部コミュニティやSNSでは「二人は決定的な大喧嘩をして憎み合って別れたのではないか」という不仲説が語られることがあります。しかし、当時の関係者への取材データや芸人仲間の証言を精緻に検証すると、その実情は大きく異なります。
確かに解散直前、ネタの方向性や活動方針を巡って激しい議論が交わされたのは事実です。しかしそれは、表現の純度を高めるがゆえの衝突であり、人間的な嫌悪ではありませんでした。元マネージャーや周囲の芸人たちの一致した見解によれば、解散決定後の楽屋でも二人は淡々と、しかし互いの実力を誰よりも認め合った態度で接していたといいます。
村田さんが「鼻エンジン」を結成した際、桶田さんは陰ながらその動向を気にかけており、村田さんもまた、作家として頭角を現していく桶田さんのクリエイティブを信頼していました。お互いの才能を誰よりも深く知っていたからこそ、「コンビという運命共同体」の枠を外し、それぞれが信じる表現の道へ進む選択をしたのです。「不仲による空中分解」という単純な言説は、彼らが交わしたプロフェッショナルとしての苦渋の決断を見誤った解釈といえます。