闘牛の魅力を語る上で絶対に外せない存在が、リング上で牛とともに戦う「勢子」と呼ばれる闘牛士たちだ。彼らは一切の武器を持たず、丸腰で1トン超の牛のすぐ傍に立ち、声と全身のステップで愛牛の戦意を激しく鼓舞する。一歩間違えれば鋭い角に突かれ命を落としかねない極限状態の連続だ。
勢子の秘伝は、牛との完璧な呼吸の同調にある。牛の耳の動きや目つき、足の踏み込みから疲れや勝機を瞬時に読み取り、絶妙なタイミングでヤグイ(掛け声)をかける。幼少期から牛とともに暮らし、同じ屋根の下で世話を重ねることで培われた揺るぎない絆。勢子の命がけの叫びこそが、牛の限界を超えたパワーを引き出す隠された鍵なのだ。