放送から時間が経過した現在も、ネット上のまとめやレビューで頻繁に見受けられる「よくある誤解」があります。作品の解釈を誤らないために、以下の2つのポイントは明確に整理しておく必要があります。
第一の誤解は、「真帆の失踪初日から河村が誘拐を企てていた」という誤認です。河村は決して一家失踪を計画したわけではありません。事件初日、河村は真帆から「相談がある」と呼び出され、不倫とDNA鑑定の件を告白されたに過ぎません。その口論の中で衝動的に真帆を殺害してしまった後、たまたま同じ夜に光莉が家出(狂言誘拐)し、篤斗が連れ去られたことを知り、自らの殺人を隠蔽するために事態をハイジャックしたのが真実です。
第二の誤解は、「葬儀屋・本木陽香は最初から河村の共犯者だった」という説です。本木は河村とは無関係に動いており、彼女を操っていたのは橘一星(後に本木が一星を逆監禁)と、裏社会の便利屋・強羅誠(上島竜兵)でした。河村が強羅を通じて死体遺棄や工作を行っていたため、関係図が混同されがちですが、本木と河村の間に直接の主従関係はありませんでした。
【プロの結論】情報消費社会の病理と「真犯人フラグ」が残した教訓
犯罪心理学および現代メディア論の観点から本作を振り返ると、『真犯人フラグ』が描いた本質は「犯人当てゲームの快感」の裏にある現代人の暴力的な情報消費病理です。
主人公の凌介は、家族を奪われた最大の被害者でありながら、SNS上の些細な切り抜き画像や炊飯器の保温ボタン一つで「妻子を殺したサイコパス父親」という濡れ衣を着せられました。ネット民は自らの正義感を満たすために憶測を真実として拡散し、メディアはPV稼ぎのために疑惑を煽り立てる。この構図は、現実の日本社会で頻発しているネットリンチや冤罪報道のメカニズムと完全に一致しています。
親友面をして凌介を煽り続けた河村の凶行も、元を正せば「自分が描いた物語で他人の人生をコントロールしたい」という傲慢なエゴでした。他者を自分の思い通りに規定しようとする暴力がいかに破滅をもたらすか。本作が提示した結末は、単なるサスペンスの解決を超えて、不確かな情報に飛びつき「真犯人フラグ」を安易に立ててしまう私たち一人ひとりの倫理観を鋭く告発しています。