多発性骨髄腫の治療風景は、ここ十数年で医学界でも類を見ないほどの躍進を遂げました。かつては古典的な抗がん剤による延命が主体でしたが、現在は分子標的薬、免疫療法、細胞療法の組み合わせへとパラダイムシフトが起きています。
3大クラスの薬剤と多剤併用療法
現在の基幹治療は、「プロテアソーム阻害薬(ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ等)」、「免疫調節薬(レナリドミド、ポマリドミド等)」、そして骨髄腫細胞の表面抗原CD38を標的とする「抗体薬(ダラツムマブ、イサツキシマブ等)」の3系統です。これらを複数組み合わせる4剤併用療法により、骨髄内の微小残存病変(MRD)を極限まで減らし、長期にわたり病勢を抑え込む「完全寛解」を目指すことが可能になりました。
次世代の切り札:CAR-T細胞療法と二重特異性抗体
再発や難治性となった場合でも、患者自身のT細胞を遺伝子改変して骨髄腫細胞を特異的に攻撃させるCAR-T細胞療法や、患者のT細胞とがん細胞を物理的に引き合わす二重特異性抗体(テクリスタマブ等)が実用化され、目覚ましい治療成績を挙げています。もはや「打つ手がない」と絶望する時代は終わり、病気と共生しながら天寿を全うすることを目指す「慢性疾患型コントロール」が現実のものとなっています。