ネット上のまとめや噂話では、「シェイクは投げれば必ず打ち取れる無敵の魔球だった」と神格化される傾向が少なくない。だが、現実はそれほど単純ではなかった。小宮山悟自身が後にメディアや自著で語ったように、この魔球には「実戦で打者に対して投げる度胸があるかどうかがすべて」という凄まじい精神的代償が伴っていた。
最大の盲点は、コントロールが本家のナックル以上に極めて困難だった点である。無回転で風任せになるボールである以上、狙ったコースへ意図通りに制球することは神業に近い。さらに、球速が80km/hしかないため、もし空気の渦がうまく発生せず、変化しないままストライクゾーンの真ん中へ入ってしまえば、プロの打者にとっては単なる「絶好のフリーバッティング球」と化してしまう。
事実、小宮山はうまく変化しなかったシェイクを痛打され、スタンドへ運ばれた苦い経験を何度も味わっている。一度でも甘く入れば確実にホームランにされる恐怖と隣り合わせの中で、満員のスタジアムにおいて80km/hのボールを腕を振って投じる行為は、並大抵の胆力では不可能だった。リスクとリターンのバランスが極限状態にあったため、2005年の日本一達成以降、2006年シーズン以降は実戦で投じられる頻度が急速に減少し、まさに幻の球種となっていったのである。