ここで、世間に広く蔓延している重大な誤解を正しておかなければなりません。ネット検索や一般的な応急処置の知識として「低血糖になったら、すぐにブドウ糖やアメ、チョコレート、ジュースなどの甘いものを摂りましょう」というアドバイスがよく見られます。しかし、これは糖尿病の薬(インスリン注射や経口血糖降下薬)を使っている患者が薬の効きすぎで意識を失いかけた時の緊急処置であり、薬を使っていない一般女性の「機能性低血糖」において同じことを繰り返すのは、火に油を注ぐ最も危険な行為です。
なぜなら、機能性低血糖の根本原因は「インスリンの過剰分泌(膵臓の過剰反応)」にあるからです。手が震える、だるいからといって、吸収の極めて速い砂糖(ショ糖)や果糖ブドウ糖液糖が含まれたチョコレート・清涼飲料水を摂取すると、確かに10分〜15分で血糖値は急上昇し、脳内でドーパミンやセロトニンが一時的に放出されて「多幸感」とともに症状が消えます。しかし、その急激な血糖上昇を感知した膵臓は、再び大量のインスリンを放出します。結果として、1〜2時間後には「さっきよりもさらに深い低血糖の谷」へと叩き落とされるのです。
これが、多くの女性が抜け出せなくなる「糖質ジャンキー(甘いものがやめられない悪循環)」の正体です。また、もう一つの極端な誤解が「血糖値スパイクを防ぐために、今日から糖質を完全にゼロにする(過激なケトジェニック・糖質制限ダイエット)」というアプローチです。筋肉量と鉄分が不足し、肝臓のグリコーゲン貯蔵力も低下している日本人女性がいきなり主食(炭水化物)を完全カットすると、体は自らの筋肉を分解してブドウ糖を作る「糖新生」を強いられます。その結果、ますます筋肉量が減って基礎代謝と体温が下がり、甲状腺機能の低下(T3の減少)を招いて、かえって重度の慢性疲労や夜間低血糖を悪化させるという本末転倒な事態に陥るのです。