ネット上で拡散された「ベクれてる」という表現は、動詞形「ベクれる」の進行・状態形であり、主に「放射性物質によって汚染されている」「放射能を帯びている」という意味合いで使われ始めました。さらに掲示板等の過激な文脈では、汚染への懸念を超えて「頭がおかしくなっている」「狂っている」といった人格攻撃や侮蔑の意味を内包する悪質なネット用語へと変質していった経緯があります。
語源となったのは、放射能の強さ(放射性物質が1秒間に崩壊する原子核の数)を表す国際単位「ベクレル(Bq)」です。ウランの放射能を発見しノーベル物理学賞を受賞したフランスの物理学者アンリ・ベクレルの名に由来する極めて厳密な学術・科学用語であり、本来そこに善悪や侮蔑的な感情が介在する余地はありません。
しかし、2011年3月の原発事故直後、未曾有の事態によるパニックと情報錯綜の中で、匿名掲示板のユーザーたちがこの物理単位を俗語化。「ベクレルを含んでいる=ベクれている」という形で、主に東日本産の農畜水産物や土壌、さらには被災地域そのものを標的にしたラベリングとして用いられるようになりました。